コールセンターを運営している事業会社がもっとも気になるテーマ、それが「収益化」です。すなわち、コールセンターで儲けを出すことができるか? 会社の利益に貢献できるか?ということです。
このブログでは、コールセンター専門コンサルティング会社、株式会社Cプロデュースの大木社長からお話をいただきます。
テーマは「収益化につなげるコールセンター運営について」です。
1.投資対効果を意識する
企業はコールセンターを創る時に多額の投資をしますが、企業活動の中のひとつの手段である「コールセンター」をどのように活用するのか、どのような目的で創るのか、しっかりとした議論がなされないまま立ち上げてしまうケースが多いと感じます。その為「フワッ・・」と創ってしまったコールセンターでは、投資対効果の意識をあまりお持ちでない経営者や役員の方もいらっしゃいます。
年間コールセンターの運営費に1億2千万円かけている場合、当然そのコストに見合った価値を求めます。では、センター設営当初にどんな効果を求めて1億2千万円をかけようとしたのでしょうか。
(1)電話の受付と付帯事務作業だけなのか、
(2)同時にセールスも行うのか、あるいは
(3)顧客リピートを増やす為の施策や応対をするのか、それが何かによって、かける費用も期待する価値も変わるはずです。
コールセンターの投資対効果の意識を経営層だけでなく、センターのミドルマネージャー層まで浸透させることが、収益化の第一歩と考えます。
2.トレース可能なメジャーメントをつくる
では、投資対効果をどのようにコントロールしたら良いのでしょうか。
まずは
「測り方」を決めることです。
そして、この
「測り方」には若干のセンスと工夫が必要です。
一般的なKPIを用いても構いませんが、その数値がどのような事象から成り立ち、
発生したのかを後から
「なぞれる」(=トレース可能)必要性があるからです。
「なぞる」ことによって再現性を確保し、つぎの仮説立案へと進むことができます。
ここでは、1件のコール受付に対するコスト(=CPC)を例にお話をします。
最近ある企業の社長から、こんな相談がありました。「通販の注文、問合せ受付業務を外部に委託して数年になりますが、月額料金が高いように思うのですが・・」と資料を拝見して分析するとCPCが2,000円を超えていました。入電規模は月間数千件で、応対や作業に関して特別な追加の要求を外部の委託先にはしていませんでした。
電話の受付と付帯事務作業(正確に、丁寧に)=CPC@2,000円以上(AHT7分程度)、CPHが5件の場合で時間あたりの料金は10,000円となります。こんな非常識な料金を理屈もわからずに数年間にわたり、支払い続けた企業があるのも事実なのです。残念ながら、この事は、委託時に投資対効果のプランをその企業がお持ちでなかったと考えるしかありません。
人件費(月総額÷月総稼働時間数)+設備費(総額の3%~4%÷月総稼働時間数)+家賃(月額賃料÷月総稼働時間数)から、時間費用を推察すれば、都内で2,500円前後、地方で2,000円前後でしょう。
電話の受付と付帯事務作業(正確に、丁寧に)で、AHT7分程度、CPH5件程度の場合、地方センターでのCPCは400円前後(=2,000円÷5件)が妥当と考えられます。
投資:CPCで400円前後
効果:正確で、丁寧な「電話受付と付帯事務作業」のコールセンターの安定運営
となります。
3.効率化→適正化→さらに効率化→最適化をつくる
今回の投資対効果の例ですと、生産性向上を求めすぎての効率偏重の可能性を伴います。CPC400円を350円に、さらに300円へと、エスカレートしやすいケースが想像できます。効率化を徹底的に実施したうえで適正値を探ることがマネージャーの方には求められます。結果的に、投資対効果、メジャーメントやトレースの認識をお持ちでないマネージャーの場合、経営層に適正値の報告(説得)が出来ないことになってしまいます。
懇意にしている人材派遣会社の社長さんに、以前こんな話を伺いました。「なぜ御社は営業担当者に、お客様企業やスタッフの方との食事や懇親会の経費利用をほぼ全て認めているのですか?」と質問したところ、「見えているものは全てコントロールか出来るからですよ」とおっしゃっていました。50名ほどいる営業担当者の経費利用は月ごとにアウトプットされて、だれが、どこで、お客様企業やスタッフとコミュニケーションを図っているのかが、社長のコントロール下にあるとのことでした。
最後に「一番怖いのは、営業担当者50名のやる気、心の中ですよ。見えるものはコントロールできますが、見えないものは簡単にコントロール出来ないから・・」と話を結ばれていました。コールセンターも同様にたくさんのテレコミュニケーターの方が働いています。おひとりお一人のやる気、モチベーションによっては、お客様との応対レベルが大幅に変わってしまいます。コールセンターの中を「見えるようにすること」「測れるようにすること」で効率化→適正化を図りながら、見えないものに対しての配慮、準備も同様に重要だと再認識をさせられました。
4.プロフィット型センターを目指す
先ほどの例に戻りますが、CPC400円前後を維持しつつ、同時に
「(2)同時にセールスも行う」を取り組んだ場合はどうでしょう。
「(2)同時にセールスも行う」場合、月総入電コール総数25,000件のインバウンド時にクロスセルをする例で言いますと、クロスセル案内率80%、クロスセル成功率25%、クロスセル売上平均2,500円/件、粗利率30%の場合ですと、1コール当たりのプラス要因は150円となります。
@150円=クロスセル案内率×クロスセル成功率×クロスセル平均売上÷粗利率
しかし、この場合は対応処理時間の上昇が見込まれますので、AHT7分→9分前後となりCPHも4件になったとしましょう。これに連動してCPC400円も→500円に上昇してしまいますが・・。
投資: |
CPCで500円前後((1)400円+(2)100円の目安) |
効果: |
(1)正確で、丁寧な「電話受付と付帯事務作業」のコールセンターの安定運営
(2)インバウンド入電時に常時クロスセルを行い、月額売上○○○○万円可能な体制
|
1コール当たりの粗利額(+150円)とCPC(△500円)との比較や考察から、次のアクション、計画の作り込みが可能となります。ただし強引なセールスをしてリピート率(顧客継続率)にマイナス影響を与えていないかも、トレースが必要です。このクロスセルという応対が、お客様の印象や気持ちにどのように影響し次への「±の動機」となってしまうのか、最も重要なところです。このことを入り口に突き詰めて考えると、違った視点での目標が設定できます。
「顧客満足度をあげる」?「収益にプラス影響を与える部分の顧客満足度をあげる」
「良い応対する」?「自社を利用しつづけてもらうための応対をする」
お客様が、
(4)自社を利用しつづけてもらうための応対(動作)とは、また、
(5)途中で解約、離反してしまう動機となる応対(動作)とは・・を、何か具体的に見つけて、(4)の数を増やし、(5)の数を減らすことが、企業収益に貢献し、センターのプロフィット化に繋がるものと考えます。例えば、(4)の具体的な事例を200個持って、テレコミュニケーター全員がその200の応対動作を習慣的に出来ているセンター・・、皆さんはどんなイメージをされるでしょうか?
「収益化につなげるコールセンター運営」(その一例)とは、電話応対の個別事例ならびにその応対プロセスの単位で、企業収益に連動出来る部分を考察して、収益にプラス影響を与える応対動作へと(どしどし、たくさん)モデルチェンジさせること、に集約できるのではないかと考えます。
皆さまの何らかのご参考になりましたでしょうか?!
なお、本文中に注釈のない専門用語については、下記参照リンクをご覧ください。
最後までご覧頂きまして、ありがとうございました。(Cプロデュース 大木伸之)
今回のブログでは、「収益化につなげるコールセンター運営について」というテーマでお話をいたしました。
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