
09年11月22日
叙述マーケティング
CEOブログ
推理小説とか映画の分野に叙述トリックというのがある。(じょじゅつ)
作者が読者に対して小説とか映画の形式での「暗黙の前提」を利用して錯覚させる手法。
たとえば、語り手が犯人とか、「僕」が女性とか、「女子大を出て数年」の老婆とか、別人と誤解させる文章によるミスディレクションとか。
----月も街灯も人家もない山道を、私はヘッドライトも点けずに平均時速80kmで駆けた。
おすすめで言うならば、
●アガサ・クリスティ 「*****」
当然に、これがこの分野での古典だ。 ホームズに飽きた頃に何も知らずに読んだ19歳の私はとても幸運だった。もう二度と経験できない。ぜひ局部的記憶喪失にしてほしいと願う。 でも全くの推理初心者は読んでも意味ない。探偵小説というのを知ってから・・でも、こういう偶然の幸運者は少ないだろう。
●乾くるみ 「イニシエーション・ラブ」
とても「ハッピーエンド」な20代前半男女のラブストーリーなのだが、最後の二行で全く別の物語だとわかり戦慄する。 誰でもが必ず二度は読見返さずにいられなくなる。 あなたが若くて、初めての叙述ミステリ読むならこれがいい。
●筒井康隆 「ロートレック荘事件」
金銭でない若い男たちの格差問題だろうか。 いかにも筒井康隆らしい皮肉な進行で、推理小説としてはすこし難あるけど、語り口の巧みさはさすがだ。 ところで、こういう絵画購入費というのは経費になるものか?
●我孫子武丸「殺戮にいたる病」
ありがちな現代風の病理が最後にひっくり返される。 核家庭を錯覚にしている部分は盲点。でも息子のいない家庭育ちには違和感あるかも。
ここまではページ数も薄いので初心者でも読みやすい。
以下三冊も初心者にも楽しめるが、最後に叙述的な驚きはある、でも読後感は決してよくない。
●道尾秀介「片眼の猿」
●歌野晶午「葉桜の季節に君を想うということ」
●綾辻行人「殺人鬼」
推理作家も大変でさらに大きな驚きを求めるマニア読者の欲求に答えないといけない。 だんだん極端になって、差別的な展開にもなりかねない。解決篇の後でも言い訳じみた綺麗事を書かなくてはならなくなる。 残念ながら、だんだん叙述も密室モノ並みにパターン化されつつある。 そういう意味では ●映画版「ハサミ男」 は推理マニアには受けは悪いが、今後の違う可能性が見えたかもしれない。 そういえば映画ならば、
●「ユージュアル・サスペクツ」
●「シックス・センス」
などは、映像だから思いっきり印象づけてミス・ディレクションできるのだろうか。
しかし考えてみるとビジネスとか商売なら叙述トリックだらけじゃないだろうか。
●「オレだよオレ、ばーちゃんオレ困ってるんだよ」
●「消防署の方から来ました」と消化器を高価で売りつける訪問販売業者。
●「太陽をいっぱい受けた産地直納の自然野菜」化学農薬を使ってないとは言ってない。
●「ミネラルをバランスよく」カルシウムとカリウムの配合比の最適値なんて厚生労働省もFDAも公表してない。
●「ウコン」「お酒の好きな方に」「肝臓が気になる方に」でもウコン成分が肝臓に効くとは言ってない。
●「体脂肪が」「ウェストが」「健康どうの」
●「行列のできる店に」「満席」「営業マンのモチベーション」「画期的な新・・」
●「給与25万円~80万円以上」「賞与200万円も」
●略
●新聞や通勤電車の吊り広告での週刊誌のタイトルの引き文句も似ている。ほとんど本来の意味のスクープなんてない。
●親切な叔母さんや結婚相談所の引き文句。 釣書ね・・求婚者とは魚なのか?
●不動産物件の写真も角度と撮影技術による、その通りだが写っている部位以外は買い手の想像と期待にすぎない。
どれもこれも「虚偽ではないが誤解を解消するつもりはない」で満ちている。 というか誤解(ミス・ディレクション)を誘導する意図で作為されている。 これがミステリや映画やマジックなら受け手側との共通の利益につながるのだが、商売では洒落ですまないという違いがある。
つまらないマーケ本などにはこれまがい手法だらけで嘔吐しそうだ。 うちも綺麗事を言う状況でもないが、こんなことしてまで金儲けするつもりはない。それは弊社クライアントの皆さんも同感でしょう。
こんな合法詐欺ともいえるか。
賭博も個人間でやるなら可能性は五分五分だが、社会団体な(競馬、競輪)とか、民間団体(カジノ、パチンコ屋)などと対個人では、確率的には決して可能性のない無益な勝負なのだからたぶん禁止すげきじゃないかな。
宝くじなんて確率的にはもっと酷いのだから、「こんな当選者が」「一億円」なんて国家的な叙述トリックといえる。
さらに米国債こそ国際的な叙述トリックなのか・・
---私はボクスターで八ヶ岳のカーブの多い山道を平均時速80kmで走るのが好き。ただし昼間だが。
(写真は中央道にて時速120kmで運転中の私が撮影。 右前方が八ヶ岳、正面が私の赤いポルシェ・ボクスター) この文章のどこにも虚偽はない。これも叙述だけど、もうわかるよね?


