BLOG BLOG 金融庁が公表した平成29事務年度金融行政方針の内容とは?

2018年01月09日

金融庁は2017年11月10日に「平成29事務年度金融行政方針」を公表しました。

ここでは、金融行政方針の概要と地域銀行が抱える課題と対応すべきテーマについてポイント紹介します。

1. 1.「平成28事務年度金融行政方針」の概要は?

金融庁が、金融機関経営の今後の姿として最も危惧しているのは、銀行業務の本業により得られる収益=顧客向けサービス業務の利益が減少、更には、マイナスになっていることです。国民の安定的な資産形成を実現する金融・資本市場を整備し、且つ、金融仲介機能による健全な金融システムを確保するためにも、金融機関が持続可能な経営を実現できるビジネスモデルを確立できるか否か、その為に必要な対策ポインとはどうあるべきか、という観点から指針を公表しています。 近視眼的な利益重視に偏重した取組みを見直し、顧客本位の業務運営を徹底することで相互価値を創造できるか否かという観点から経営改革を実現することを求めているようです。 今年度の金融行政方針の目次は以下の通りです。

不動産業向け貸出金増加額内訳推移



2.顧客本位の業務運営とは?

・顧客本位の真意

個人向け営業活動の中で重要視されている投資性商品の販売に対する活動方針という観点から「顧客本位の業務運営」について示されていますが、本来、全ての業務に関して「お客様」の実情を捉え、適切な説明の下で商品サービスを提供する体制を整備することが求められています。つまり、専門的知識を有する金融機関としてお客様の最善の利益を追求することを前提に、関連する全ての業務活動について見直し、且つ、実施する必要があります。 カードローンやアパートローンへの取組み等、個別具体的に検討すべきテーマも示されていますが、「お客様の実情を如何にして捉えることができるか」という点がポイントになります。

・資産形成への個別対応

また、高齢化社会を迎え、社会保障制度に対する不安へ対応すべく、若年世代に対する資産運用面への対策、退職世代に対する金融サービスのあり方も含めた具体的な対策について検討し、より具体的なサービスを提供する必要もでてきますが、その際にも「顧客本位」の本質を踏まえ、対応することが求められます。

メインバンクによる企業への訪問



3.持続可能なビジネスモデルとは?

・地域金融機関への指摘

顧客サービスによる利益がマイナスになっている金融機関が、特に留意しなければならない点は、持続可能なビジネスモデル=経営を維持成長させるための業務活動について、経営層もしっかり考え実践することです。経営上の課題は何で、それに対してどう考え、どういう対策を講ずるかという点を早急に体系化することが必要です。

・金融庁幹部のコメント

「本業による収益がマイナスになる機関が想像以上に増加しているが、足下、信用コストが低位に推移しており、経営に重大な問題を抱える金融機関は無いと思う。しかし、今後の金融市場には不確実性もあり、想定されるリスクによりバランスシートに傷がつく可能性も否定はできない。」 と、適切なリスク管理とガバナンスの更なる強化を実施すべきと警鐘を鳴らしています。

・金融庁が求めるモデルとは

金融庁が評価したモデルとして紹介されている事例が参考になりますが、顧客本位の持続可能なビジネスモデルの事例として考えるべきポイントは次の通りです。 お客様目線の経営方針へ転換すると同時に、営業現場の職員に対する業績目標のノルマを廃止し、お客様本位の自主的な支援計画の策定を促進する。つまり、短期的な利益を追求するのではなく、相互利益を創造する活動に転換することです。 同時に、ITの利活用も含めた業務効率化により活動時間の改善を行い、お客様対応の活動を重点的に推進することで、中長期的にお客様との関係が強化され、収益性の低下を最小限に抑えられる仕組みを作ることです。

メインバンクによる企業への訪問



4.IT技術進展への対応とは?

・新たな技術基盤への取組み

フィンテックに代表される「新しい技術」が出てきましたので、その技術内容を検討し、その技術を使ってお客様に対して新たなサービスを提供できるか様々観点から研究体制を支援していますが、問題になるのが法体系です。来年度、銀行法と資金決済法、割賦販売法が、縦割りになっている点を改善すべく横断的に見直すことになります。 金融機関としては、新たなサービスを検討する際に、技術面の研究も必要ですが、上記以外の貸金業法や個人情報保護法も含め、法体制面につても研究することが重要となります。

・仮想通貨への対応

日本では、Jコインの検討等、法定通貨である円との交換を前提とした決済機能としての活用が主体になっています。 一方で、「ICO」という仮想通貨を発行して資金を調達するという新しい手法も現れています。現状、リスクがあるということで注意喚起がなされていますが、ベンチャー企業に対する資金提供手段としては、ある程度、事業そのものをしっかり捉えられるのであれば、一つの方法論として考えられるものです。 お客様本位の活動の一環として、新たなビジネスモデルの一手法として、新たな技術やスキームを活用した新サービスの開発、検討も必要になります。

メインバンクによる企業への訪問

*上記記事は、HFMコンサルティング代表 本田氏の監修によるものです。

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