BLOG BLOG 本「ザ・ファシリテーター」から学ぶファシリテーションで組織変革!

2018年05月07日

もう10年以上前に発行された書籍ですが、先日、上司に薦められ、今回、読書の機会を得ました。

最近、新入社員も入り部内メンバーの増加、各種ミーティングの仕切り機会も増えるであろう事、
当社主催のセミナーや勉強会での司会進行の役割も期待されての事が、本書を推薦された理由かと、そう認識して読み始めました。
ファシリテーターには以下程度のイメージしか持ち合わせていませんでした。
・・・平等に意見を引き出す司会・進行役?
・・・議論にプラスアルファで自分の思いも混ぜつつ場を引っ張るテレビの討論番組で朝方まで見るあの人のような感じ? と。

実際に、本書「ザ・ファシリテーター 人を伸ばし、組織を変える」を読んでみて、ファシリテーターのイメージはどう変わったか、何を掴んだかを本ブログでお伝えしようと思います。

ザファシリテーター_ファシリテーションの力.png

本書は、小説仕立てです。
物語の場所は、ある中規模の化学品メーカーSCC社。主人公はマーケティング部のリーダーだったリョウこと黒澤涼子という女性です。
彼女が社長直々に任命され、全く畑違いの製品開発センター長に大抜擢されます。
年齢も経験も自分を上回るメンバーに囲まれ、業務改善、組織変革に奮闘する姿が描かれます。
その中で、ファシリテーションが持つ役割やノウハウを披露していきます。
ファシリテーションの様々なフレームワーク、ツールの場面に即した使用例が散りばめられています。

1.「ファシリテーション」「ファシリテーター」とは?

作者の森氏は前書きで、ファシリテーションとは、
「人と人とのインタラクション(相互作用)を活発にし、想像的なアウトプットを引き出すもの」と定義しています。
また、物語中では、「ファシリテーションは知のグループウェア」という表現もあります。

論理を「構造化」して、「可視化」して共有するもの。可視化する事で思考プロセスを個人の頭の外に出し、グループで知恵を合わせて考える事ができるというものです。

そして、これを実現に向かわせる役割が「ファシリテーター」です。

では、ファシリテーターは、どんな知識やスキルが必要なのでしょうか。

2.「ファシリテーターにとって必要なスキル」とは?

ファシリテーション・スキル(コミュニケーションを助ける技術)は勿論ですが、ファシリテーターのスタンスとして、まずフェアである事が大切です。また、次のような行動も必要です。
 ・会議参加メンバーの発言を反対意見も含め自ら記録していく事
 ・場合によっては反対の立場に立って、異なる視点から発言を促す事

また、質問する際は、以下のような観点で質問を投げかけ、会議参加メンバーの発言を引き出すのも必要となるスキルの1つです。

・【 発言を促す技術 】
1.「全体を意識させる質問」(ツリーやプロセスマッピングを用い、全体の中での役割を考えさせる)
2.「分散(多様性)を意識させる質問」(平均値や特殊ケース、先入観を防止)
3.「コントローラブルなものに議論を向けていく質問」(自分達でコントロール可能か?の視点)
4.「時間軸を意識させる質問」(今回だけ、今だけではないか、時間経過を意識させる)
5.「基準を意識させる質問」(ベンチマークはあるか?それは一定か?の視点)

・【 コンフォートゾーン 】
人間は(その弱さからか)油断すると直ぐに身を置いてしまうと言われる自分の快適領域があります。その領域で留まっていては挑戦しなくなり進歩も止まります。組織変革のファシリテーターには、メンバーをこのコンフォートゾーンから連れ出し、納得づくでストレッチゾーンに引き出し、チャレンジの心を呼び覚ますことも求められます。

コンフォートゾーン.pngのサムネイル画像(本書p260を元に作成)

このように、ファシリテーターは、ファシリテーション・スキルに加え、メンバーをやる気にさせ、チャレンジを促し、全体の行動を引き上げられる事が必要なスキルとなります。

 人を動かすには、限られた時間内でチームビルディングを行い、議論を活発にしなければなりません。
次の項目では、そのあたりの手順やツールをお伝えします。

3.「活発な議論を促すための方法」とは?

・【 アイスブレーク
活発な議論を促すために有効な方法があります。
皆さんはアイスブレークをご存知でしょうか?
ファシリテーターが参加者の気持ちをほぐす為に用いるゲーム的な要素を持つイベントです。
活発な議論を促すために、まず「心理的な障害を出来るだけ早く取り除く為」に利用するようです。
本書では、物語の展開上、面白みを足すという思惑だったのかもしれませんが、このアイスブレークの方法がいくつか紹介されていますので、名前だけ紹介します。
「ウソつき自己紹介」「スノーフレーク」「目隠し道案内」「ボール遊び」等々
こういったアイスブレークは、「会議の始め」だけでなく、「頑なになっている心を柔らかくほぐす為」や「感情的な議論(激論・熱弁)の後で気持ちや雰囲気を変える為」にも行うと有効なエクササイズです。


・【 ジョハリの窓 】
続いて必要なプロセスが、チームビルディングの仕方にも関わってくる「ジョハリの窓」です。
これは、自分や他人を理解するプロセスを図解したものです。心理学者2人のファーストネームから名付けられた「対人関係における気づきの図解モデル」で、以下のような広がりが見られると信頼関係が深まります。
⇒ 領域Ⅰが領域Ⅲに広がる事を自己開示と言います。これが行われると防衛機制も減り、安心感が生まれ、信頼関係が醸成されます。
⇒ 領域Ⅰが領域Ⅱに広がる事をフィードバックと言います。他人が本人の気付いていない事をおしえてあげるプロセスです。

ジョハリの窓.png(本書p60を元に作成)

・【タックマンモデル】
最後に「タックマンモデル」についてです。
まず、概念として、物事が「収束」する前に、必ずいったん「発散」という過程が必要という事をメンバーに認識しておいて貰う事も大切なようです。
「フォーミング、ストーミング、ノーミング、アンド・パフォーミング」これは、韻を踏んだ英語の言い方ですが、組織は、形成(フォーミング)された後、すぐに機能(パフォーミング)しはじめるのではなく、その前に、ストーミング(混乱・対立)があり、ノーミング(統一)が進んではじめて機能しはじめるという心理学者タックマンが唱えたモデルです。
つまり、「フォーミング(形成)→ストーミング(混乱・対立)→ノーミング(統一)→パフォーミング(機能)となる訳です。
お互い感情的になって、議論をし尽くす事で、最終的には前向きなエネルギーが生まれてくるという訳です。

まず、このような流れで活発な議論を促すための準備を整えます。
こういった取り組みから始まり、この後いよいよ本番の各種策定や分析、議論に入りますが、それは実際の書籍「ザ・ファシリテーター 人を伸ばし、組織を変える」でご確認いただければと思います。本書が、いよいよ面白く盛り上がっていくのを物語を楽しみながら、プレゼンテーションのノウハウについて触れて頂けるのではないかと思います。

4.さいごに

本書は、「ファシリテーター」について、主人公自身が自らをファシリテーションを目的とする人ではなく、皆の意見を引き出し、よく聴いたり、触発したりでチームを引っ張っていくリーダー。いわゆる「ファシリティブ・リーダー」であると語っている事もあり、各企業におけるリーダー的な立場の方に大いにお役立て頂ける実用書だと思います。
見出し項目以外の本文の中で唯一?太字になっていた部分。それは、この物語内の最高責任者・社長の亀井氏が主人公リョウこと黒澤涼子に対して感じた思いの箇所です。彼女がファシリテーションと称してやっている事を以下のように理解した場面です。

「会議のやり方」というレベルのものではない。人を触発してクリエーティブなアイディアを生む。動機づけ、行動を変えるものなのだ」と。

 作者・森氏は、この言葉を言わせたくて、このような小説形式でファシリテーション、ファシリターについて書いたと思うのは私の勝手な見解ですが、少なくとも私個人にとっては、この本でファシリテーションの進め方の疑似体験、仮想体験ができ、多くの学びがありました。
「ファシリテーター」・・・人にも会社にも多くの影響を与え、人の行動を変える、自身の行動も変わっていく。
その第一歩目を、この書籍から始められると思います。

近い内にファシリテーターをやる事になりそうという方、うちの会社は不毛な会議が多いんだよな。。。という方、また、チームの全員をやる気にして業務変革を成し遂げたいという方・・・等々、いろいろな方に是非ご一読いただければ幸いです。

この物語の会社同様、貴方の会社でも、必ずや変化は起こせると信じています。

(課題解決に向けた 当社マーケティングセミナー https://usonar.co.jp/seminar/

(本書出版元:ダイヤモンド社リンク http://www.diamond.co.jp/book/9784478360712.html