2019年05月29日
企業のマーケティング担当者の方は、新商品や新技術を市場に投入する際に、市場調査などマーケティング手法を活用したことがあるのではないでしょうか?
従来、新商品や新技術を市場に投入する際には、意思決定のプロセスの1種である「コーゼーション(因果推論)」という手法が多く活用されています。「コーゼーション」は目的からの逆算で意思決定を行う手法であり、目的を達成するために何をすればよいのか?に着目した手法です。
「コーゼーション」のアプローチでは、まず新しい製品やターゲット市場の設定と、消費者をはじめとする自社を取り巻く環境の十分な理解を出発点とします。
そのため、フォーカス・グループ・インタビューやサーベイリサーチなどを行いますが、その結果を元にした推測のように理路整然と進まないことが実際のマーケティングの現場では少なくはありません。
なぜかというと、「コーゼーション」に基づく計画が合理的となるのは、以下2点の前提が満たされる場合となります。
・市場の移り変わりをリサーチや試行の繰り返しによって予測可能な場合
・市場に対して企業が適応するだけであり、企業活動を通じて市場を作りかえる事象は発生しない場合
実際の市場では、上記2点の前提を満たすことはほぼなく、不確実な市場の中でマーケティングを行う必要があります。
そこで、優れた起業家が行っている意思決定の思考プロセスが「エフェクチュエーション(実行論)」です。
この思考プロセス 「エフェクチュエーション」は、ノーベル経済学賞を受賞したハーバート・サイモン教授の弟子であるインド人経営学者、サラス・サラスバシーによって体系化されたものです。
「エフェクチュエーション」の根幹にある考え方はSTPなどの市場から見たマーケティング論ではなく、「まずはやってみる」ことにあります。その考え方を以下5つの行動原則にデータ利活用の視点を含めてまとめました。
① 手持ちの鳥の原則(Bird-in-Hand)
すでに自社で保有しているリソースを活かすことを優先する「手段主導」の行動原則です。つまり、「自分は何者か」(アイデンティティや選好、能力)、「何を知っているのか」(訓練、経験から得た知識)、「誰を知っているのか」(社会的ネットワーク)を含む手持ちのリソースを用いて、「何ができるか」を模索することを指します。
→模索をするためには、予め自社で保有する情報を把握しておく必要があります。
② 許容可能な損失の原則(Affordable Loss)
仮に失敗した場合に「どれだけの損失なら許容できるか」をまず決定し、その上で手持ちの手段の中から活用すべきものを選択する行動原則です。
→経営判断するためには、社内外のデータを用いた判断基準が必要です。
③ クレイジーキルトの原則(Patchwork Quilt)
マーケティング活動を通じて構築された人脈・パートナーシップを活かし、提供してもらえる資源を柔軟に組み合わせて何ができるかを考える行動原則です。
→そのためには、社内で散在した名刺などの人脈データの社内共有が必要です。
④ レモネードの原則(Lemonade)
マーケティング活動の中で偶然に生じる出来事(想定外の事象やトラブルなど)を逆手に取り、行動を編み出していくという行動原則です。具体的には、粗悪品のレモンをつかまされたら、レモネードを作るという発想の転換を指します。
→今現在起こっている事象を正確に把握するためのデータ基盤が必要です。
⑤ 飛行中のパイロットの原則(Pilot-in-the-plane)
事業機会を引き寄せるためには、日々の注意や変化への対応を怠らないようにするという行動原則です。マーケティングの実行は自動操縦ではなく、飛行機のパイロットのように細かい数値や変化をチェックし、迅速に対応することが必要になります。
→迅速な対応を行なうためにも様々なデータを欲しいタイミングで取得できる基盤が必要です。
「コーゼーション」と「エフェクチュエーション」のプロセスは以下図のように大きく異なります。
「コーゼーション」は「目的」ありき、「エフェクチュエーション」は「手段」ありきの手法であることが分かります。
どちらの考え方にもメリット・デメリットがありますが、どちらもデータを正確に把握する必要があります。
特に市場の環境の移り変わりが予測しづらい現在は、市場で勝ち抜くためには「コーゼーション」だけでなく、「エフェクチュエーション」を上手く組み合わせ、補完していくことが重要です。
この「エフェクチュエーション」を行っていく上でポイントとなるのが、市場の把握だけでなく、自社が持っているリソース(資源)・強みを正確に把握することです。
そのためには、自社が保有している様々なデータを統合し、見える化しておく必要があります。
ランドスケイプでは、データクレンジング・名寄せの技術を活用した顧客データ統合ソリューション『uSonar』により、市場の規模などの情報提供だけでなく、自社の強みを把握できるデータ基盤の構築を支援しています。
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