BLOG BLOG 東京のどこに住むのが幸せか?

2010年07月02日

『東京のどこに住むのが幸せか?』 山崎 隆著 講談社(2007年)どこに住むのが幸せか?などと言われても余計なお世話以外のなにものでもありませんが、この本は、主として将来的な不動産の資産性という観点から、購入後の減価がすくなく、また賃貸時の収益性に優れた場所はどこか。というような視点で書かれたもので、そのような場所を選ぶと余分な苦労をしなくて済む。また評価(価格)の高い場所には都市生活を謳歌できるいくつかの要素があるというような話になっています。この本の主張は、<どこに住むのが幸せか?>という書名のように不動産を買う前に街を買え。不動産を吟味する前に、街を吟味せよ。というものです。著者は、過去の不動産売買、賃貸価格データを用いた統計的な検証と、各街区の歴史的な成り立ちをひもとくという手法で、優れた街・将来性のある街の要素を記述していますが、その内容を大きくまとめると1.時間をかけて発展した街
(旧武家屋敷街が発展>戦前から開発>戦後徐々に開発>同時期一斉開発)
2.地域コミュニティがあり、文化の多様性や許容度のある街
3.古代から自然災害被害の少ない街
4.教育、医療、自然環境、就労環境など都市の基本インフラが揃う街
これらの要素をすべて高い次元で充たしているのは「麻布」や「広尾」だそうで、一般人にとっては実に縁のない、眺めるだけの話になってしまうのですが、そこまでいかずとも、自分の興味のある街の過去と現在、将来を見通して、これから発展するか否かを考える上での判断材料になる内容が述べられています。もちろん、買うのではなく、安く借りたいのなら、安くなる理由が自分にとって納得のいく地域を選ぶ。というやり方もあります。自分の求めるモノによって、上の条件のうち、いくつかは要らないものを決められるはずですよね。
(手持ちの物件を売りたい不動産会社さんに聞いても、その街の良さしか教えてくれません・・・)
2007年刊と、ちょっと古めのこの書籍。今回、このブログでご紹介したのは、実は、近々、不動産の購入や引越を考えておられる方のためではなく、最近、エリアマーケティングをする上で、安価になったGISや一般に入手可能な統計情報に加え、他のいろいろなデータを用いて、市場に迫りたい。というお問い合せを頂くことが多く、我々としてもご要望にお応えすべく、さまざまなデータベースを組み合わせてはご提供しているのですが、それでもその街の歴史やその街に住んでいる人達を具体的にイメージするには、まだまだ不足する部分があり、勉強しないといかんなぁ。という自戒を含めてでもあります。なお、この本のネットでの評判を見ると、街の良さを単純化しすぎていないか。基準が単純すぎて例外が多すぎないか。などという批判も多くありますが、単純な基準で、多くの実態を見ることによって、はじめて見えてくるものもありますし、この本で取り上げている55エリアのほとんどを(自転車で)回ったことのある私の経験からしても、広く浅くかもしれませんが、その街やその街に住んでいる人を理解する上では充分に役に立つと内容と思いますし、東京の外を含めこの本に収録のない場所を訪ねたときも、街の成り立ちを想像する力がついてきているような気がします。もちろん、エリアマーケターにとっては、エリアデータ、GISの画面やGoogleアースの画像を眺めるのが、ぐっと楽しくなりますかと。

BLG0702B_MusashiKoyamaS.JPG

(写真)活気と将来性のある「明るい下町」として、この本のイチオシの街のひとつ。品川区の"武蔵小山"にある商店街。長さ800mほど。いつも活気があり、日曜日の午後など、入るのがコワイくらい混んでいます。

ところで、東京に住むことが「本当に幸せなのか?」というのも面白いテーマのような気がします。誰か書いて貰えませんか?


《ランドスケイプのエリアマーケティング用統計データ》
「Geo-Scope(ジオスコープ)」

<書籍データ>
『東京のどこに住むのが幸せか』著:山崎隆 講談社 ISBN978-4-06-214340-0
 第1章/衰退する街と繁栄し続ける街の分岐点
 第2章/歴史を知らないと東京の街はわからない
 第3章/本当に資産価値が高い物件の見抜き方
 第4章/東京7ブロック55エリア別「この街に住んで幸せか」

                                                   (記:古沢)