BLOG BLOG 秘密の解除

2010年07月23日

 私事ですが、映画を見ることはほとんどありません。小説などの映画化作品は大体原作を読みます。その後、テレビなどで映画化された作品をみると、往々にして原作の方が良いなと思ってしまいます。

 そんな原作の方が良かったなと思ってしまった作品のひとつとして、東野圭吾の『秘密』という作品があげられます(以下、ネタバレがあります)。

 交通事故によって母親直子の魂が娘の藻奈美の身体に宿ってしまうのですが、この憑依を父親平介と藻奈美の身体に宿った直子とが「秘密」にして生活するというストーリーです。
 物語終盤で藻奈美の魂が戻り、直子の魂が他界したことにされるのですが、実際にはこれは直子の嘘で、藻奈美の魂は戻ってきていないことが示されます。そして、平介は直子の嘘に気付きますが、直子は平介に嘘がバレていないと考えたまま、物語は終わります。

 余談ですが、ハッピーエンドを期待する人にとっては、東野作品の多くは、結構、後味の悪い終わり方だと思います。個人的にはそこが好きだったりします。

 閑話休題。このように、原作では、「藻奈美の身体に直子の魂が宿っていること」(世間に対する平介と直子の秘密)をベースに、「藻奈美の魂が戻ってきて直子の魂と入れ替わったという嘘」(平介に対する直子の秘密)と「直子の嘘を知りつつ騙されている振りを続けること」(直子に対する平介の秘密)といったように秘密が三重になっています。しかし、映画では最後のシーンで、後2者の秘密が秘密ではなく、明るみに出されてしまっているのです。つまり、平介に嘘がバレたことを直子が知ってしまうのです。

 原作で三重化された秘密が解除されてしまっている点が、個人的に映画版を好きになれない理由ですが、先ほども述べたように、秘密を解除し、後味の悪さを消し去らないと市場では受容されないのかもしれません。

(担当:天野)

今年になってからギターを買ってしまいました。10年以上ボールを蹴っていなかったサッカー(フットサル)に続き、こちらも全然です。でも、休日は少し楽しいです。

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