BLOG BLOG 青山の自転車屋さん

2010年10月01日

2ヶ月ほど前、日経新聞の地方経済面(東京)に「高級自転車店、青山に急増、富裕層・外国人に的、輸入自動車から転換」というタイトルで"東京・青山周辺にロードバイクなど高級自転車を扱う店が急増している。富裕層や外国人が多く、高級自転車に乗る人が増えている"という内容の記事が載りました。

この記事、一部では青山を"自転車のアキバ"と呼ぶヒトもいる。とか、聞いたこともない話がでています。(いま検索してもこの話はこの記事の引用で使われているケースしか見つかりません) 

が、たしかに青山近辺には、日本の自転車・自転車部品メーカーや米国ブランドの会社が旗艦店・情報発信拠点としてのお店を出していたり、はたまた、モノを売るのではなく、使い方を教えたり、この地区に遠距離から通勤する人たち(高性能な自転車を使うと20~30キロの通勤は楽勝です)のために、日中、自転車を保管したり、着替えの場所やシャワーを提供したり、独立系の資本が、この地区に合わせたオシャレ系の自転車店を最近開店したりしています。

ということで、今日は、そのあたりを書いてみました。

■輸入車販売店からの転換・・・ニコルユーロサイクル 

青山通りのカナダ大使館近く、草月会館横。昨年、BMWの販売店から、いきなり自転車店に転換しました。"ニコル"というと、昔、BMW使いのレースドライバーとして有名だったニコ・ニコル氏が経営している会社で、ただのBMW販売店じゃないよ。という雰囲気があっただけにビックリしました。日経の記事のネタは、この店にあるようです。数年前には、このショールームに、ニコルが輸入権をもつブガッティ・ヴァイロンという、最低保証出力1001馬力(この数字は千夜一夜物語に由来)。当時1億8000万円ほどのクルマがさりげなく置いてあったこともあります。いま、店先には10-15万程度の自転車をならべ、店内には高額なもの。という展示ですが、イベントやメンテナンスサービスなど、少し富裕層系のヒトやオシャレなヒトに絞って運営している模様。店員さんも増えどうやら成功しているようです。<写真1>

■自転車部品メーカーのアンテナショップ・・・シマノOVE

自転車部品の"インテル"的存在(ウソではありません)である 大阪の"シマノ"が2006年から運営。自転車そのものがテーマではなく、快適や健康、自然をキーワードにするライフクリエーション・スペースという位置づけのアンテナショップで、外から見る限り、中に何台か自転車がある以外、このあたりによくあるカフェにしか見えません。(実際に自然食系のカフェになっています) 申し込むとシマノの部品を使ったコンフォート系の自転車に試乗できたり、短距離のグループサイクリングに参加できたりするのだそうですが、かなり上品なお店なので、私は入ったことがありません。(正直、どういう"アンテナ"なのかよく解りません。。。。。シマノは品質いいけどダサイ。というイメージを持っている人が多いようなので、その反動でしょうか)<写真2>

■ハンドメード・アート系?のお店・・・OLD HANDS(閉店)

ファッション系のビルとして有名な"ベルコモンズ"に昨年末オープン。今年8月に閉店。自転車好きだけでなく、アートやデザインに興味のあるヒトにご来店いただきたい。というコンセプトのお店で、比較的広い店内に、イタリアのいくつかの工房の製品を展示していました。オーダーメードで数ヶ月待つと、クラッシックスタイルの美麗なロードレーサーが手に入るというビジネスモデル。オーダーメードといっても、競技用として最近主流のカーボンでなく、スチールなので、それほど高価ではなかったのですが、高価でないと利益も出しにくい訳で。。。もともとニッチな市場ですし。。。神奈川の石油販売・自転車店チェーン経営の資本でしたが、1年保ちませんでした。<写真3>

■スーパーの売り場:オリンピック

最近、スーパーの"オリンピック青山店"が1階の青山通り沿いに、自転車店を開設。2万円くらいの日常使いのものから扱っているようです。(最近、こういうパターンのお店も多いです。渋谷のハンズも6階?から地上階に売り場が移転していますし)<写真4>

■ブリヂストンサイクルのアンテナショップ・・・青山バイクフォーラム

キラー通り沿い。大手自転車メーカー、ブリヂストンサイクルの運営。自社新製品の記者発表や自転車入門っぽいイベント(自社製品を貸し出しての短距離サイクリングツアーなど)を多く開催しています。この場所の2階はどうやら、ブリヂストンサイクルの商品企画系のオフィスになっているようです。で、こういう一等地にも関わらず、日曜日は原則お休み。こういうアンテナショップ(ショールーム)を作る理由。ブリヂストンサイクルというと、本社は上尾市ですが、品質いいけどダサイ。というイメージを持っている人が多いようなのでその反動でしょうか。(シマノと同文。日本メーカーの持病?)<写真5>

■ロードレーサーの老舗・・・なるしまフレンド神宮店

この店、有名です。売り場面積はそう広くありませんが、日本でいちばんロードレーサーを売っていて、かつ、その7割がハイエンド部品で組まれている(80-120万円コース?)というウワサです。もともとは千駄ヶ谷近辺でレーサー専門で長く商売をしていたのですが(MTBが大流行したときも、店には1台も置かず。よくガマンしたものです)、ここ数年、成長路線に走っているようです。今年6月にキラー通りに移転したときは、とうとう超メジャー路線に行くのか。と話題になりました。実直に商売をされていますが、定休日の水木に加え、土日含めよく臨時休業(レース参加とかイベント主催とか理由不明とか)することでも有名。遊び道具を売る店は、こういうところの方が尊敬されたりします。ちなみにこの店の立川店は、昨年末に移転していますが、移転先は、輸入車ディーラー(ジャガー)だった場所で、駐車場が広すぎて笑えます。こういう店にクルマで行くのはカッコ良くないっす。<写真6>

■米国ブランドの旗艦店・・・スペシャライズドコンセプトストア

2008年開店。スペシャライズドというと、世界で初めてMTBを量産した会社(スタンプジャンパー:切株をジャンプする。という名前。世界初のMTBブランドがコレ)で、日本では、長い間、ダイワ精工さんが輸入元として丁寧な商売をされていたのですが、ブランドコンセプトを徹底するためという理由で、数年前、米国本社の直営による輸入販売になりました。

この店には、スペシャライズドの主要商品が並べてある(いま売れ筋はロードレーサー)ほか、MTBの元日本チャンピオンが居て、正しいペダリングのレッスンとか、自転車のポジションの測定と乗り手に合わせた調整とか、マニアックなサービスも提供しています。(測定は21000円と31500円の2コース。常識的にいえば高いはずですが、予約がなかなか取れないらしいです)<写真7>

■通勤自転車サポート・・・ファンライドステーション・グランディヴェル

ともに2010年開店。前者はアールビーズ(旧名:ランナーズ)という出版・スポーツイベント主催等の会社が運営。後者は、大手の自転車販売店を退職して会社を起こした人の運営。ともに、通勤に使う自転車を預かるのと、着替え場所・シャワールームの提供というビジネスモデルを持っています。前者は発行している自転車雑誌の記事との連動企画など情報発信機能があり、後者は、トレーニングのアドバイスや指導等、少しマニア系のサービスと組み合わせてのビジネス。利用料は、ファンライド23000円/月、グランディヴェル13400円/月。
グランディヴェルが入居しているのはCHARI千駄ヶ谷というビルですが、ビル全体が、自転車関連ビジネス、チャリ好き企業をターゲットにテナントを募っているソーホー向け物件ということになっていて、見た目は地味ですが、中は普通ではないようです。<写真8・9>


■その他・・オークション系・原宿/代官山系? マップスポーツ・FIG原宿・プロテック青山

マップスポーツは中古ロードレーサーの売買。実店舗は買い取り、販売はヤフオクが主戦場のようです。ロードレーサーって、買ってもほとんど乗らない人も多いので、そういう人が手放した車体だと、おいしいかもしれません。この店は、パソコン販売で一時期、大勢力を誇ったソフマップの創業者がオーナーです。<写真10>


F.I.G原宿・プロテック青山。ともにセレクトショップっぽい感じの自転車店チェーン店でしょうか。若者や学生が日常の移動でよろこんで使えるような、カッコイイものを集めて売る。という感じのお店のようです。間口が広いような、そうでもないような。<写真11・12>

他にも、裏っぽい通りでいきなり開店している店や、地元で長く商売をされているようなお店、トップ選手用の低酸素(高地)トレーニングが出来る施設がある。という話も聞いたことがあるのですが、ここまでいくとよくわからないので省略します。

■まとめ(例によってまとまらない)

青山~原宿という場所、裏に回ると狭い道が続いていたり、ファッションやデザインの仕事や勉強をしていて、近くに住んでいるけど、お金があまりない人が多かったりで、昔からちょっとおしゃれな自転車が多く行き来していた場所ではあるのですが、数年間から神宮外苑で大学対抗の自転車のレースが行われるようになったり、エコに絡めた自転車関連のイベントが多く開催されるようになったりで、街全体が、自転車重視の方向にあることは確かなようです。私は、この界隈を自転車で通る機会が多いのですが、最近になって富裕層とか外国人が動き始めてこうなった。というよりは、アパレルやデザイン系のお店やビジネスに流れていたお金が失速気味な中で、お金もかからず、健康によく、ちょっとシャレていて、エコでもあるし、なにより都心の移動であれば、雨の日以外、自転車のデメリットは何もない。ということが皆に周知されてきたことが、この動きにつながっているのかなあと思っています。そういう中、不動産の賃貸料が大幅に下がって、自転車ビジネスでも、この地区を選べるようになったことで、こういうショップがうじゃうじゃと産まれてきたのかなぁと。

さて、最近の東京の休日は、皇居近辺など、自転車であふれている場所がいくつもあります。多摩川などのサイクリングロードなどもたいへんな状態(事故多発中とか)になっています。平日も相当なスピードで街を駆け抜ける自転車の数がふえています。が、日本の場合、法制度も道路行政も、70年代に"暫定的"に自転車に歩道通行を許可してしまって以降、歩行者・自転車・自動車の混合交通は、ほとんど無政府状態になっており、負の部分も多いのです。(自転車に乗る警官ですら法を守っていません・この問題に入ると深いのでやめます)

で、東京は過去50年くらい自動車をいかに大量に円滑に流すか。ということに社会資本を使ってきたのですが、このあたりを大きく見直す時期になっているように思います。東京って、山手線を一周しても40キロほど。自転車なら、どこでも行ける程度の大きさしかないのです。そういうところの街の中心部を時速40キロでクルマを走行させるより、時速18-25キロくらいの自転車(か,他の軽便な移動ツール)を多く流した方が、ちょっと止まっての買い物とか、何かを見物したくなったりしてお金を使うとか、結局のところ経済効果も皆の幸福度も大きそうなものです。渋滞学という、クルマや人の行列をいかに減らすか。という学問があるそうですが、クルマを排除するか、自転車(のようなもの)に乗ってくるヒトをたくさん集めるかは別にしても、街の中心部では人や交通機関の流れを、意図的に停滞、あるいは遅行させることによって、その場所を活性化する方策を考える方が、良いのではと思ったりもします。                                                     

                                                                  (記:古沢)

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