BLOG BLOG 『建築家 安藤忠雄』

2011年01月14日

こんにちは、マーケの高木です。
先週の古沢のブログにもありましたが、今年注目の出来事の一つに地デジ化がありますね。そこで注目されているのが、新たな観光スポットである、世界で一番高い電波塔"東京スカイツリー"です。この東京スカイツリーは、日建設計の設計で、施工は大林組が担当していますが、一人の建築家がそのデザインの監修を行っています。建築家 安藤忠雄です。
最近では建築に詳しくない人でも、ご存じの方も多いのではないでしょうか。
本日は、彼の自伝『建築家 安藤忠雄』より、安藤忠雄という人物をご紹介したいと思います。
■安藤忠雄とは
安藤忠雄氏は世界的にも有名な建築家で、イエール大、コロンビア大、ハーバード大で客員教授を務め、2005年には東京大学特別栄誉教授に就任しました。
一般的にも有名な建築物としては、
 2008年に開業した「東急東横線渋谷駅駅舎」や
 旧同潤会青山アパートの跡地の再開発として2006年オープンの「表参道ヒルズ」、
 島根県直島でベネッセコーポレーションと共同で実施している一連のアートプロジェクト
などがあります。
そして、直近では2010年に、これまでの功績を称えられ、文化勲章を受章しました。
有名大学での教鞭歴、有名建築物の設計、様々な受賞、と華々しい経歴ですが、建築家としてのデビューまでの道のりは、そう簡単なものではありませんでした。
■建築家までの道のり
安藤忠雄は1941年兵庫県で一卵性双生児の兄として生まれました。生後間もなく親元から一人離され、母方の祖母の家で育てられました。勉強よりも喧嘩のほうが得意な、やんちゃで自由な子供として育ったそうです。
工業高校に入学し2年生からボクシングを始め、17歳でプロボクサーのライセンスを取得。プロボクサーとしての戦績は順調で、一時はタイからの招待試合で、一人で海外まで試合をしに行くほどでした。しかし、そんなあるときに、彼のジムに当時の花形選手が練習に来て、見学する機会に恵ます。はじめのうちは楽しみにしていた彼ですが、次元の違いという現実を見せつけられ、すぐにボクシングをやめました。ボクシングを始めて2年目、ちょうど高校を卒業するころのことでした。
高校卒業後は、幼少期から好きだったモノづくりへの興味から、アルバイトで家具やインテリアの設計をする道を選びます。祖母の世話になるわけにいかず進学を諦め、一般企業には自由な性格が合わなかったための選択でした。こうして、アルバイトで生計を立てる傍ら、大学に潜り込み建築学科の講義を受けたり、教科書を買い集め1年間で読破するなど、独学で建築を勉強していきます。
20代前半には、日本一周や7カ月に渡る渡欧旅行をしながら、様々な建築物を実際の目で見る旅をし、1969年28歳でようやく、梅田で小さな建築事務所を開き、建築家 安藤忠雄としての人生が始まります。
■建築活動
安藤の建築活動は、大きく分けると1970年代には住宅建築を、1980年代には商業建築をメインに設計し、1990年代に入ってから、公共建築や海外の建築の設計に移っていくという流れがあります。
有名な建築物について説明していくと紙面が足りないこともありますし、実物もしくは写真付きで見ていただいたほうが分かりやすいため、ここでは、2つの特徴的な建築にフォーカスすることとします。
1つは、衝撃的なデビュー作、そして2つ目は、現在にも続く20年以上に渡る彼のライフワークについてです。
その、実質的なデビュー作は、1976年に日本建築学会賞を受賞した「住吉の長屋」という建築物でした。大阪市住吉区の下町の長屋が立ち並ぶ真ん中に建てられた、間口2間×奥行き8間のコンクリートの箱の家は、賛否含め大きな注目を集めました。
「住吉の長屋」の特徴を大きくまとめると以下の3点になります。
 1)開口部が入口以外にないこと
 2)すべてコンクリート打ちっぱなしであること
 3)ただでも狭い空間を3等分にし、真ん中を中庭にしたこと
古い建物が並ぶ街並みにコンクリートの箱が建つことも景観上の非難はありましたが、特にその、3番目の中庭の存在は非難を浴びることとなりました。それは、雨が降れば、寝室からトイレに行くのに、傘をさして中庭を横切らなければいけないためでした。
しかし、そこには、単純に機能主義からみた批判的視点では見えてこない、氏の思いが込められていました。幼少期、昔ながらの長屋で、夏は暑く冬は風が吹き抜ける寒い家に住んでいた安藤にっとって、「住まうということ」=「自然の一部として生活すること」であるという答えに行きついた結果だったのです。クーラー付きの快適な機能重視のアメリカ的な住宅ではなく、あえて中庭から入り込む自然と共生することで、そこでしかできない生活というものを考えさせる住宅を選択したのでした。
続いての彼のライフワークとは、1980年代後半からベネッセコーポレーションと一緒に開始した、直島プロジェクトです。1993年のベネッセハウスミュージアム、1996年のベネッセハウスアネックス、1999年の南寺、そして、2006年の地中美術館など、現在に至るまで、安藤は直島の公共建築を作り続けてきていました。かつて、過疎化が進んでていた直島は、今や、世界的なアーティストが作品を作りに来たり、全国のアート好きの観光客が押し寄せる、観光スポットとなりました。
この一連のプロジェクトの中には、安藤が考える、公共施設に対する思いが強く反映されています。
それは、彼の以下の言葉(自伝から引用)からうかがえます。
「公共施設の本当の問題は、建築が完成した、その後の時間にある。その建物がどのように運営され、地域の人々の生活に息づいていくのか。すなわち、箱の使われ方の問題である。」
「建物はつくるより、育てる方が難しい。育てるには、長い時間、粘り強く継続する意思の力が必要だから。」
自分が作った箱が"どのように使われていくのか"見届けるためにも、安藤は今後も直島と係わり続けていくのでしょう。
■安藤忠雄という人の特徴
さて、ここらで、彼がどういう人なのかという点について、これまでの話とは関係なく、まとめたいと思います。3点にまとめます。
1点目は「コンクリートへのこだわり」、2点目は「考えさせる建築」、3つ目は「環境保護活動」です。
①「コンクリートへのこだわり」
コンクリート打ちっ放し=安藤忠雄と言えるほど、彼の建築物はコンクリート打ちっ放しで作られることが多いです。そんな彼のコンクリートへのこだわりとは、コンクリートが「安価」な材料であったため使い始めた彼にとって、「現場での一発勝負でしか品質を管理できない難しさ」への挑戦と「無機質なコンクリートをつかってあらゆる形と質感を表現する」という挑戦、この2つの挑戦なのです。
②「考えさせる建築」
子供のための施設もいくつか計画している安藤は、計画の重要なテーマとして「全てを設計し尽くすのではなく、あえて目的のない、ほったらかしの場所をつくること」をあげています。かつて空き地(自由なスペース)で好きなように遊んでいた経験から、子供の想像力を働かせるためにあえて、何の目的もない空間を作っています。水際で柵がない空間や、目的のない空間などは、施主からすると「危険」で「無駄」なため、柵をつくったり自由な空間をなくすことで、構造物で人の行動を制御するような建物になってしまいます。そこを、あえて、そうした空間を作ることで、考えさせられる空間というものをつくることを心がけているのですね。
③「環境保護活動」
彼の作る建物、彼の活動と自然・環境とのかかわりは深いものがあります。「住吉の長屋」でもあったように、建物に自然を取り入れるという姿勢は、建物が環境の一部だからという考えに基づいています。そのため、世界的な課題としての環境保護という課題に対して、建築家として何ができるのかということに対して、真剣に向き合っています。そうした結果の1つである東急東横線渋谷駅駅舎は、機械に頼らずに自然換気できる構造として、当時メディアでも取り上げられました。また、直接的な活動として、東京湾の埋め立て地に植樹するというプロジェクトにも係わっています。
■最後に
普通に生活をしていると、特に建築物に対してここまで考えることはないでしょう。単純に、綺麗だと思ったり、驚いたり、心地よいと感じるなどの感情がでてくる程度ではないかと思います。私自身、建築物には興味がありましたが、安藤忠雄の「光の教会」に行った際も、綺麗だな、という程度の感想をもっただけです。その建築物がどういう、金銭的制約で苦労しながら作ったのかなど知りませんでした。しかし、本書を読み、建築家の詭弁かも知れませんが、建築物に込めた思いやコンセプトを知るとで、それらの建造物に対する私自身の見方や、感じ方が変わりました。
美術館に行ったおりや、街に買い物に出かけたおりに、いつもと違う視点で空間を見てみると、新しい発見があるかもしれません。
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<写真;学生時代に撮った「光の教会」>
■東京で見られる作品紹介
おまけとして、東京で見ることのできる安藤忠雄の作品を一部ご紹介しておきます。
 1;アウディジャパン本社(2002@世田谷尾山台)
 2;国際子ども図書館増築(2003@上野公園)
 3;東京アートミュージアム、シティハウス仙川、せんがわ劇場(2005@調布)
 4;表参道ヒルズ(2006@表参道)
 5;21_21 DESIGN SIGHT(2007@ミッドタウン)
 6;東急東横線渋谷駅(2008@渋谷)
 7;東京大学大学院情報学環 福武ホール(2008@文京区)
参考;安藤忠雄著『建築家 安藤忠雄』新潮社、2008年
記;高木

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