
10年05月20日
「グーグル秘録」
CEOブログ
ケン・オーレッタ「グーグル秘録 完全なる破壊」文藝春秋
今朝から視察旅行に行くのだが、つい早朝まで読んでしまった。 本書にある情報の95%はたぶん誰もが既知の内容だが、二人の創業者とシュミットCEOの三人へのインタビューがすごい。
この三人の人間関係は異常ともいえる。 とりわけペイジとブリンの、ほとんど仕事領域の90%は重複しているだろうに仲の良さは不思議だ。能力も関心も知識も経験もあまりに重複しながら、これだけ成功しながら、精神的にお互いを頼らなければならないほど弱くなく、それでも今だにグーグルプレックス本社の42号館(!)の共同執務室で模型や無数のモニターに囲まれて仕事している。 秘書はいなくて「グーグルカレンダーを見て」と宣言して幹部らをさらに困らせたり。 この二人を見ているとマイケル・ジャクソンの私生活が常識的に見えるほどだ。 年上のシュミットCEOとの関係も特殊なもので、煩わしい業務を押し付けられたことを喜ぶ反面で「官僚的だ」「大企業病だ」「優先順位がおかしい」と言いながら、週末の幹部会議でペイジとブリンの最大の関心議題が、福利厚生で無料のマッサージ師の人事面の待遇とチップとストックオプションの関係だったりする。
とにかくペイジとブリンは誰もが名前を知っているが相互の性格と得意分野と顔が一致する人は少ないかも知れない(私もいまだに)。 しかし決して傲慢でもオタクすぎる訳でも独裁的でもない。 せいぜい裕福な大学院の研究生のような生活だ。 こういう二人が世界中のメディアと広告とコミュニケーションを左右することが逆に恐ろしい。
技術優先、論理優先で突き進み、出版社、放送メディア、プライバシー、消費者団体、国家への無理解のまま「私は邪悪にならない、ゆえに私は邪悪でない」という循環論理で自転している社員2万人の帝国。
(余談だが、初期の頃からgmailを使っていたが、削除キーがなかったことで米国でプライバシー問題を引き起こしたのは知らなかった)
ビル・ゲイツもスティーブ・ジョブズも、ちょうどスターリンやチャーチルのような存在で、彼らがいなくても補完的で代替的な政治家が大国には現れただろう。 しかしヒトラーの出現はあくまで偶然でありえない歴史の不確定要素ではないだろうか。
本書はクレイトン・クリステンセンの「イノベーションのジレンマ」に旧来のメディアが落ち込んでいく序章からはじまり、15章と16章ではグーグル自体も自己の強みと成功体験に拘束される可能性を示唆するあたりが構成のキモだろう。
とにかくグーグル本は検索しなければならない程あるが、アル・ゴア元副大統領との関係を含めて三人の経営層に肉薄した内容はすばらしい。
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