BLOG BLOG 本『あの明治大学が、なぜ女子高生が選ぶNo.1大学になったのか? 奇跡を起こすブランドポジションのつくり方』に学ぶブランディング

2018年03月28日

マーケティングの基本概念に「STP」という概念があります。STPとは、「S:セグメンテーション」「T:ターゲット」「P:ポジショニング」を指しており、マーケティングの目的である「自社が誰に対してどのような価値を提供するのか」を考えることです。 今回は「P:ポジショニング」に焦点を当てて、成功事例みたいと思います。

企業が繁栄していくためには、ポジショニングは非常に重要な要素です。どこに位置づけるかで、どのようにブランディングしていくべきか、どのように価値を創造していくかが変わってくるためです。

本コラムでは独自のポジショニングを築き、ブランディングに成功した法人の事例を紹介します。それはなんと「明治大学」です。 皆さんは明治大学にどのようなイメージを持っているでしょうか。関東で有名な偏差値の高い、歴史ある伝統校の中の1校というイメージでしょうか。 または、駅伝や六大学野球、ラグビーなどが強いスポーツの伝統校という印象でしょうか。はたまた芸能人やタレントを多く輩出していることで有名なイメージでしょうか。

明治大学のイメージは年代などによって全く異なっているはずです。なぜならバブル期に大学時代を過ごした世代からすると、明治大学は男臭い、学生運動の活発な学校であったからです。このコラムを執筆している私は平成5年生まれですが、明治大学はオシャレで華やかな、受験生に人気の学校という印象を持っています。

一見両極端なこのイメージは、どちらも間違っていないようです。つまり、現在の明治大学は、その過去からは想像もつかない変化と改革でイメージを一変させてきました。 その明治大学の改革の一端を、本『あの明治大学が、なぜ女子高生が選ぶNo.1大学になったのか?』(著:上坂徹)を参考に、本コラム内で見ていきたいと思います。

あの明治大学が、なぜ女子高生が選ぶNo.1大学になったのか?

1.明治大学の改革。その原動力とは?

明治大学は今や、あの早稲田大学よりも志願者数の多い大学となりました。2010年~2013年の4年間は連続で志願者数全国1位を誇っています。その人気を支えているものは何でしょうか?
それは1つには言い切れませんが、大きくあるのは「学校・学生のことを最も思っている、その思いの強さ」にあるのではないかと思います。
日本初の大学内高層ビルや、女性用のパウダールームの設置、メディアで取り上げられるような表面的なものではなく、根幹に「学校・学生への強い思い」が揺らがずにあったことが、大きな成功要因でありました。

その具体例の1つが、2007年の入試改革にあるといいます。今でこそ明治大学の志願者数は延べ11万人を超えていますが、一時期は7万人台まで落ち込むほど状況は厳しいものでした。これを機に大きな入試改革に乗り出したのです。

「全学部統一入試」、さらには地方学生向けに首都圏だけでなく、札幌・仙台・名古屋・福岡と受験地を全国に拡げていきました。
「全学部統一入試」では8つの学部の足並みを揃えて問題を作成しなければならない上、学部別の試験問題もあり、教員の負担は増えます。地方入試においても、各地に教員が試験監督として派遣もされるため、当然負担は増えました。
それでも実現できたのは当時の教務部長の熱い思いと、その思いに賛同した各学部の思いがあったからでした。目的は志願者数を増やすためではありましたが、地方の学生の負担のことを考えて取り組んだ改革でした。その結果多くの地方学生を獲得し、志願者数を増加させることに成功し、「方言の聞こえる大学」として全国から学生が多く集まったのです。

2.広報が行ったイメージ改革。偏差値でははかれないポジションづくりとは?

明治大学ではブランドイメージの変革。大学の「見え方」を変化させるべく、広報改革に乗り出しました。プロ野球の球団である日本ハムファイターズの広報担当、いわばプロの広報を獲得し、改革へ踏み出して行きました。
日本の私学の中ではすでに慶応・早稲田はブランドが確立しています。ここへ挑むと言うよりは、偏差値とは違ったフィールドへポジショニングを移し、「入学したい大学」にポジジョンを変えていったのです。

広報ではターゲットを明確にし、誰に何を伝え、どのようにイメージを変化させていくか。ということに重きをおきました。さらには、出稿媒体ごとにテーマを変え、メッセージを変化させました。ある新聞ではスポーツをテーマに文武両道のイメージを打ち出し、ある新聞では大学の研究力を打ち出し、有名な進学校とのコラボレーション記事を打ち出したそうです。

そして、これらの広報改革において予算は増額したわけではなく、過去と同規模のまま、どの媒体にどのメッセージを打ち出すのかをシビアに検討し、成果につなげていきました。

また在学生向けの学内報も大胆に手を加え、ファッション誌さながらの、いわゆるオシャレでスタイリッシュなイメージのものを発刊していきました。そうして在学生自身も明治大学のブランド意識を高く持つようになり始め、誇りを持って卒業し社会で活躍する。それを受験生たちは目にして、憧れを持って、志望するという形で「知覚品質」を高めていきました。

我々企業も必ずしもお金をかければ良い広告が出来上がるわけでも、ブランド力が上がるわけでもありません。最も重要なのは、誰に何を一番伝えたいのか、それはどこで届けるのが最も適切なのかを見極めることです。明治大学は広報の効果と押さえるべきポイントを、結果を持って証明しています。

3.我々企業が明治大学の改革から学ぶべきこと


明治大学は人々の目に触れる部分の改革だけでなく、根幹に何を目指すかというビジョンを明確に持って、そのビジョンにしたがって改革を推し進めていきました。
そのために、明治大学にあって他の大学にはない強みはなにかを明治大学自身が正しく捉え、意識し、大学全体で取り組んで行きました。

しかし、思い切った改革や取り組みには必ず失敗というリスクが伴います。企業人であれば、推し進めたくとも会社の賛同を得られず諦めることも少なくないと思います。
本書の中に企業人全てに関わる興味深い学長の言葉がありました。「若い人間が革新的なわけではない。経験を積んだ人間のほうが、ここでやらないと、というのがわかる。経験を積んだ人間が一歩を踏み出し、そうやって若い人間を引っ張っていく。そういう人間が日本企業の中に出てこないと、僕はダメだと思う」

将来安泰が約束されている企業や団体は、今の日本にはもう1つもないと私個人的には思います。そんな中で、強い思いと意志で引っ張っていくリーダーと、チャレンジする日本企業がもっと出て来なくてはならない。そう私は感じました。

本『あの明治大学が、なぜ女子高生が選ぶNo.1大学になったのか?』(著:上坂徹)ではより詳細な改革の内容や、現在の明治大学の様子、どの人物がどのような想いで改革に携わったのか、現役学生のリアルな声など、本コラムでは書ききれなかった内容がたくさん展開されています。
この大胆な改革はいかにして実現したのか、その全容はぜひ書籍を手に取ってご覧ください。



 『あの明治大学が、なぜ女子高生が選ぶNo.1大学になったのか?』(著:上坂徹)
 本「ストーリー・ブランディング」から学ぶ。 ~ブランドと見込客を近づけるには?~



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