BLOG BLOG お寺とコンビニはどっちが多いのか?

2010年09月24日

はじめての本ブログへの登場となります。高木と申します。よろしくお願いします。

さて、先月、奈良の実家に帰省した折に、興福寺の阿修羅像を観てきました。現在は、奈良市内の興福寺国宝館にて、並ぶことなく拝観できますが、昨年全国の博物館を回った際には、各地で大盛況だったようです。特に東京国立博物館開催の「国宝 阿修羅展」は、約半世紀ぶりに東京公開されたことや、昨今の仏教/仏像人気もあり、イギリスの美術専門誌「The Art Newspaper」が発表した昨年の展示会入場者数ランキングで世界第1位(1日平均1万5千人超)でした。

ところで、非常に個人的な話になりますが、実家は、歩いて5分ほどの距離にお寺が二つあり、15分ほど歩くと世界遺産の法隆寺があります。ちなみに、コンビニまでは15分ほどかかるので、お寺に行く方が便利です。
東京で暮らしていると、実家付近の環境は非常に特殊(お寺が身近?)に感じますが、実際に特殊なのかどうか調べてみました。


まず、日本にはどのくらいのお寺が存在するのか調べてみますと・・・
文化庁編「宗教年鑑 平成20年版」によると、仏教系宗教法人は77,540法人存在するそうです。(ちなみに、弊社保有の法人データベースLBC中を検索すると、業種細分類9421:寺院、仏教教会の件数は74,025件でした。)
国土地理院のホームページによると平成21年の日本の面積は、約37.8万km2ですので、これを寺の数で割ってみると、4.87 km2(半径約1.25kmの円)に1ヶ寺存在するという計算になります。つまり、だいたい歩いて15分ほどの距離に1つのお寺が存在することになります。(徒歩のスピードは分速80mにて計算しています。)

一方、コンビニエンスストアの数を調べてみますと・・・
社団法人日本フランチャイズチェーン協会のホームページによると、JFA 正会員コンビニエンスストア本部 10 社の合計で43,270店舗存在するそうです(2010年8月時点)。

つまり、お寺はコンビニの1.8倍も存在することになります。
僻地や離島も含めて日本国内で平均すると、歩いて20分ほどでコンビニがあり、15分ほどでお寺があるという結果です。こうしてみると、自分の実家は畑と田圃に囲まれておりますが、コンビニは日本平均より少し近く、お寺は日本平均よりだいぶ身近にあるようです。

■都道府県対抗 お寺の身近さランキング

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コンビニよりも多いという数字でも驚きでしたが、これだけお寺が存在している理由について少し調べたところ、さらに驚きの数字が出てきました。1815年刊行の「掌中年代重宝記」によると、日本全国で95万9,042ヶ寺存在していたそうです(この数字が確かかどうかは確認ができませんが、江戸の古地図などを見ると非常に多くの寺院が存在したことは確認できます。

goo地図の古地図参照。http://map.goo.ne.jp/history/index.html

江戸時代にこれだけお寺が存在していた理由は、徳川家康が制定した寺院緒法度が、影響しています。この法律により、当時の日本国民は全員、いずれかの寺院に登録されることになりました。仏教界としては幕府から取り締まられるというデメリットはありましたが、確実に檀家が確保でき、上納金が確保できるというメリットがありました。

こうして、江戸時代に急増し身近な存在となったお寺ですが、中には檀家の葬儀費用だけでは経営できない寺院もでてきます。その結果、お寺が富くじ(現代でいう宝くじ)を発行したり貸金業を営み資金確保を行ったり、境内では飲食店や芝居小屋や寄席ができるようになっていました。当時はお寺でも様々なマーケティング活動を行っていたのですね。明治時代に入り廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)により、お寺の数は減ってしまいましたが、それでも、現代でもこれだけ多く存在しています。今後のお寺の動向は未知数ですが、江戸時代のように各お寺でマーケティング活動が活発になれば、大きなビジネスチャンスが眠っていそうです。

                                                               (記:高木)

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(写真)奈良斑鳩の里 法輪寺

参考
奈良康明編「新版 日本の仏教を知る事典」 東京書籍株式会社、2005年
安藤優一郎「大江戸お寺繁昌記」 平凡社新書、2009年