BLOG BLOG 「シブヤ経済新聞」

2010年10月22日

今日は、「シブヤ経済新聞」と「みんなの経済新聞ネットワーク」について書きます。

「シブヤ経済新聞」は2000年に始まったネット新聞。運営しているのは(株)花形商品研究所という広告とパブリックリレーションの小規模な会社です(従業員は7~8名のようです)。「みんなの経済新聞ネットワーク」というのは、現在では、「シブヤ経済新聞」が日本の各地(一部海外)で「エリア名+経済新聞」として展開されており、その総称です。現在、これらの月間のページビューは700万ほどとされていますが、ヤフーニュースへの配信も行っていることから、知らない間に、このネットワーク発信の情報にふれている人も多いと思います。

■「シブヤ経済新聞」ってどういうもの?

・サイト名: シブヤ経済新聞
・URL: http://www.shibukei.com/
・サイト概要: 広域渋谷圏のビジネス&カルチャーニュース

この新聞が創刊した2000年頃の渋谷というとビットバレーとかいうコトバがあって、ITベンチャー起業家とそれを支援する資本(とそのまがいモノ)が跳梁跋扈した頃です。

2000年からの4年間ほどは「シブヤ経済新聞」だけの運営で、広域渋谷圏(渋谷、青山、原宿、代官山、恵比寿くらいまで)の街のビジネスとカルチャーを取材して発信する。というもので、渋谷のような情報発信力があって、注目している人も多い地域だから、成り立つモデルだろうと思っていたのですが、2004年、ヨコハマ。2005年、六本木、天神(福岡市)、サカエ(名古屋)、2006年には、吉祥寺、アキバ、銀座、新宿、湘南、伊勢志摩、烏丸、那覇、仙台など12エリアを追加、以降2007年19エリア、2008年14エリア、2009年6エリア、2010年は4エリアを追加し、現時点(2010年10月)で国内24都道府県の56エリア(うち東京が21)、海外4カ国4エリアに拡大しています。(下部に府県とエリアの一覧を載せています)

記事の内容は、どのエリアの新聞でも共通しており、その地区のビジネスとカルチャーを取材して発信するものです。一般に新聞というと、社会問題にせよ、経済問題にせよ、何かしらの問題提起や、ネガティブな情報が書かれているものなのですが、この「みん経」については、基本的にハッピーニュースしか扱われません。ので、新しい店のオープンや地域のイベントなどが多く見られます。(ときに老舗の閉店を惜しむ記事がトップだったりします)

基本的には狭いエリアのニュースを扱うので、1日数本くらいのニュースが配信されていれば多い方のようです。

その他の特徴というと、いつもその地域を見ている人が直に取材しているだけあって、発信者のリリースする情報をそのまま載せるのではなく、咀嚼した上で、書かれていることでしょうか。発信者の意図する企画やマーケティング上の狙いなどが見えてくる記述が多いようにおもいます。ネットの記事はアーカイブされるため、結果として"街の記録係"の役割も果たしているようです。

■なぜ、エリアを拡大できたのか?

前述したように、当初は「シブヤ経済新聞」だけの運営でした。楽しい記事が多かったり、一般紙やタウン誌・街情報のネットを見ても載ってないような記事があったりして重宝はしていたものの、ローカルはローカルで、いまのように全国、また海外に拡張していくことを想像できるようなものではありませんでした。

また、紙面(画面)を見るとわかるように、広告も少なく、記事情報発信元におもねるような内容(ペイドパブのようなもの)も排除されていて、訴求できるエリアが限られていることもあり、広告モデルとして優れているとはとても思えないものです。創始者は西樹(にしたつき・花形商品研究所の社長)という人ですが、もともとビジネスモデルとしては考えておらず、自分が長く暮らしてきたシブヤの街の仕組みや、その仕組みを仕掛ける側の狙いが読み手として、解るような媒体がほしかったから、自分が作った。と発言されています

では、なぜ、これほどの急拡大(2006年からの3年間だけで45エリアに展開しています)が出来たのでしょうか? この理由、充分に調べきれた訳ではないので、一部、私の推測が入るのですが、以下に書いてみます。

(1)運営主体のネットワーク
運営中の60エリアのうち、花形商品研究所が直接運営しているのは、東京の4エリア(しぶや、銀座、新橋、自由が丘)のみです。他は、「こころざし」というか、理念や意識を共有できる企業(というより人)に運営を委ねていることのようです。運営企業の一覧をみるとWEBやコンテンツ制作の会社、印刷、出版業が多いものの、地域活性化を目的とするNPO団体や、地域ポータル運営、タウン誌発行、ローカルなネットラジオ局などが含まれています。(変わり種としてはデジタルハリウッド大学/アキバや、結婚式の企画サービス/長崎などもあります。著名といえば、デジハリさんと博報堂の名前のついた子会社くらいで、その他はかなり小規模な組織のところばかりのようです)

もちろん、運営しているのは、NPO以外は、営利目的の団体ですから、趣味でやっている訳ではなく、こころざしや理念だけでも継続はしないのですが、そこは、"ビジネスモデル"としての利益は無いけれども、その地域で細く長く、「**経済新聞」としての活動を続けていけば、街やヒトとのつながりができて、なにか面白いことが起きるかもしれません。という少しゆるい話に企業として乗ってみる。という企業が、(株)花形商品研究所の営業活動としての結果ではなく、人間関係やネットワークを通じて集まっている模様です。(展開エリアがバラバラで順番にも整合性がないのは、そういう理由のようです)

(2)低コストの運営を前提としているシステム
もともと(株)花形商品研究所の社長の西樹氏が、平常の業務の傍ら運営していた"新聞"なので、ニュースの更新頻度次第ではあるものの、専任の担当を置かなくても稼働できる仕組みになっていたり、コンテンツ掲載用のプログラムやサーバが、各運営者間で共通のものがシェアされていて、低コストでの運営が可能なものにしてあるようです。(シンプルに見えるデザインですが"2010年グッドデザイン賞"に選ばれています)

(3)コンテンツの優位性・安定性
前にも記しましたが、この「経済新聞」は,一般の媒体が多くは扱わない身近でハッピーなニュースを扱っています。人にWEBを訪ねてニュースを見て貰えるコンテンツを継続するということは、結構なエネルギーが必要なことだと思うのですが、その地域で暮らす人やその地域の動向に興味を持つ人にとって、他の媒体では得られない丁寧な取材を経て記された記事を読むことができる。という優位性を持っています。ネット新聞・地域情報ポータルというのは、一般の新聞社や広告会社等でやっているものも多いのですが、"紙面を埋めるための記事"や"結局のところ宣伝"・"お役所などからの通達事項"だったするケースがほとんどな訳で、定期的な閲読に堪えないものが多いように思います。

サイトを読む人にとっては、(1)の運営主体も(2)のコストの問題も、サイトの満足には、関係がない訳で、このコンテンツの優位性をどう安定的に保つかが、成長(というより維持)のキモになる部分です。「みん経」は、各エリアの運営団体がばらばらで、緩やかにネットワークされているだけなので、この部分をどう保っているのか、非常に興味があるところなのですが、ここは正直、今回、よく解らない部分になってしまいました。大きな資本や著名な編集者を使ったWEB2.0的なニュースサイトが軒並みダメになっていく中、勢力を広げ続けているこのニュースサイトには、まだまだヒミツがあるのかもしれません。

■「みん経」をどう使うか。

私の場合で言うと、週末、用事があって、吉祥寺に行くのだけど、ついでに回れるところはないか。とか、昔、住んでいた街がいまどうなっているんだろうか。とか、面白そうだけど、よく解らない街(私にとっては下北沢とか亀有)とかに行くときに、ちょっと予習してみたり、狙いや動向が自分にはわからない施設(なんとかヒルズとか、なんとかミッドタウンとか・これは地域というよりも所得の問題かな)について、「みん経」で読んで、なんとなく解ったような気になったりしています。
もちろん、このエリアでビジネスをしている企業さんであれば、そのエリアの運営者にコンタクトすれば、密度の濃い記事を書いて貰えて、うまくすればヤフーのニュースになって、もっと上手くすれば、ヤフーのトップページに見出しがのって、とても応じきれなくなるほどの受注や問い合わせが殺到する。というようなことも狙えます。このあたりは、下にある「市ヶ谷経済新聞」の運営者の書いた『ヤフートピックスを狙え』という本に、情報発信者として、心がけるべきこと・仕掛けるべきことを、うまくまとめられているようです。
                                                               (記:古沢)

参考)
みんなの経済新聞ネットワーク『不況に負けない経済グッドニュース』(2009,東京書籍)
シブヤ経済新聞『シブヤ系スタイル徹底研究』(2001,東急エージェンシー)
菅野夕霧『ヤフートピックスを狙え』(2010,新潮社/新書)
ネットに登場した次世代のタウン紙「シブヤ経済新聞」
http://www.mdn.co.jp/di/articles/157/

[展開している都道府県とエリア]
01[北海道] 札幌
01[岩 手] 盛岡
01[宮 城] 仙台
01[秋 田] 秋田
02[茨 城] 水戸・つくば
01[群 馬] 高崎前橋
21[東 京] シブヤ・六本木・赤坂・市ケ谷・亀有・上野・アキバ・日本橋・銀座・新橋・品川・羽田・池袋・新宿・吉祥寺・調布・立川・八王子・町田・下北沢・自由が丘
05[神奈川] ヨコハマ・港北・横須賀・湘南・小田原箱根
01[長 野] 松本
01[静 岡] 浜松
03[愛 知] サカエ・名駅・岡崎
01[三 重] 伊勢志摩
01[石 川] 金沢
01[滋 賀] びわ湖大津
01[京 都] 烏丸
01[奈 良] 奈良
03[大 阪] 梅田・なんば・京橋
02[兵 庫] 神戸・姫路
01[広 島] 広島
01[山 口] 山口宇部
01[愛 媛] 松山
02[福 岡] 天神・博多
01[長 崎] 長崎
02[沖 縄] 那覇・石垣
04[海 外] シンガポール・バンコク/バンクーバー/ニューヨーク


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